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本を読むことで認識が新たなる。これまで読んできた本の中なら、「自分らしく生きる」ために、そして「創作人生」に役立つ本を紹介します。






  • 001 『身ぶりと言葉』
    アンドレ・ルロワ=グラーン
  • 002 『引き裂かれた自己』 
    R.D.レイン
  • 003 『共同幻想論』
    吉本隆明
  • 004 『方法序説』
    ルネ・デカルト
  • 005 『メノン』
    プラトン
  • 006 『自己・あいだ・時間』
    木村敏
  • 007 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
    マックス・ヴェーバー
  • 008 『進化とはなにか』
    今西錦司
  • 009 『緋色の研究』
    アーサー・コナン・ドイル
  • 010 『狭き門』
    アンドレ・ジイド
  • 011 『創造する無意識』
    C.G.ユング
  • 012 『現代哲学』
    バートランド・ラッセル
  • 013 『学校と社会』
    ジョン・デューイ
  • 014 『母性社会日本の病理』
    河合隼雄
  • 015 『茶の本』
    岡倉天心
  • 016 『ゴダール映画史』
    ジャン=リュック・ゴダール
  • 017 『陰翳礼讃』
    谷崎潤一郎
  • 018 『建築はどうあるべきか』
    ヴァルター・グロピウス

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.010 『狭き門』  アンドレ・ジイド

: Originally published in 1909

「労力に対する報酬という観念は、立派な魂を損なうものよ」

この物語の裏にあるのは、自己犠牲という感覚がつくる“結末”であり、それは人生に対する遠慮を超えた「自己放棄」とでも呼べるものです。つまりそこにあるのは、「個人」ではなく完全なる敬虔さ。主人公ジェロームとアリサの可能性は、アリサが持つ純粋な宗教感覚によって阻まれていく。自己犠牲に囚われた個人の姿は、現代においても終わった問題ではないでしょう。ジイドが伝えようとした自己犠牲の結末は、個人の幸福を獲得するためにこそ、必須の認識なのです。物語に凝縮されたテーマが人々を解放する 、憂愁に包まれた名作。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.009 『緋色の研究』  アーサー・コナン・ドイル

: Originally published in 1887

「ぼくにとって、そんなものがいったいなんの役にたつのかな!」

誰もが知るシャーロック・ホームズが世に出た第一作目。ストーリー自体は推理ものとして単純明解です。しかし、コナン・ドイルが作り出したシャーロック・ホームズの「情報処理の姿勢」は、情報過多の現代人に一つの指標を与えるもです。彼はあらゆる知識に通じた天才でありながら、その反面、一般人が知る当然の知識(常識)をまったく持っていない。地動説すら知らないという始末。彼は言います。「無用なものを覚えて、役に立つ知識を追い出さないようにするのは、じつにたいせつなことですよ」と。ネット社会での新しい「常識」を予感した、学ぶところの多い娯楽小説です。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.008 『進化とはなにか』  今西錦司

: Originally published in 1976

「われわれは進化を現場で押さえることができない」

“生物には自然淘汰では説明できない形態がある”という着想から、個体レベルの進化ではなく、種レベルでの進化の発想に行き着く。ダーウィンが唱えた「ランダムな突然変異」による自然選択説に対し、「方向性をもった突然変異」を対置。これは生物に主体をもたせるいわゆる目的論として、自然科学の世界ではタブーとされてきた視点である。さらに進化する種自体が、それを取り巻く一連の「エコシステム」に組み込まれたものであるというホーリズムを展開する。進化論の源流であるラマルクを蘇らせたような、今だ新しい″開放系”種の社会構造論である。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.007 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』  マックス・ヴェーバー

: Originally published in 1920

「(彼らは)“労働と産業活動を神に対する義務”と考えている」

比較宗教社会学によって論じられた「資本主義解体新書」とでも呼ぶべき一冊。この本によれば、プロテスタンティズム(特にカルヴァン主義)の世俗的禁欲と天職倫理(救いを得るための労働)が、資本主義の原動力である「利潤追求の合法化」の精神をつくりだしたという。禁欲的な“節約”が、結果的に資本形成と生産的な利用を促す。さらに天職を「救済を得る最良の手段」とすることで、資本主義的“営利”生活が神に添うものとなる。資本主義の宗教的な構造を明らかにした、まさに資本主義を超えるための必須の論考です。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.006 『自己・あいだ・時間』  木村敏

: Originally published in 1981

「現在の病態が患者の人生にとってどのような意味をもっているのかを見極める」

日本を代表する精神病理学者による論文集(1968年~1978年)。決して単純化しては語れない、分裂病(統合失調症)者についての臨床的な知識をこの本によって得ることができる。しかし前半には鬱病に対する重要な論文も収められているので、二つの病態の比較も可能だ。特に「分裂病と時間論」において展開される「ノエマ・ノエシス」の概念から把握される自己や、「‟前夜祭”と‟後の祭り”」といった分裂者の時間的病態の把握などは、明らかに哲学者としてのセンスがうかがえる。あまりにも貴重な経験と情報がが詰まった一冊です。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.005 『メノン』  プラトン

: Originally published in BC387-

「知が導くとき幸福を結果し、無知が導くときは反対の結果になる」

「徳」とはなにか。それは教えられるものか。訓練によって身につくものか。あるいは、もともと素質として備わっているものなのか。これらの「徳」への問いを、プラトンは対話形式によって深めていく。主人公ソクラテスは、対話者メノンに問いかけ、ときに混乱させることによって、その人がもともと持っている「知」を再発見させる。知らないことを「知っていると思い込む」ことが、“探究”の意思をなくす「知的怠惰」の原因である。それがこの本のもう一つのテーマ。中学生にでも読める内容だからこそ、生徒と教師が一緒に読み、同じ問いを考えることができる。そんな「真の教育」を促す“哲学の教科書”と言える一冊です。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.004 『方法序説』  ルネ・デカルト

: Originally published in 1637

「わたしは考える、ゆえにわたしは存在する」

いわゆる「われ思う、故にわれあり」で有名な、デカルト41歳にして初の著作。「理性を正しく導き、学問において真理を探究するための」という副題が示す通り、「哲学書」であると同時に「生き方の手引書」ともなっている。六部構成で、特に前半部分は、現代の「自由の増大」に比例した「倫理の喪失」という問題に、一つの道しるべを示すものである。第二章では、明証、分析、総合、枚挙、と言った思考判断の奥義が、第四章ではヨーロッパの心身を分離した「心身二元論」(デカルトは終盤二つの一体化を強調する)が語られる。平易で明解な文章。一日で読み通せる長さ。そして普遍的な内容。あらゆる意味で「最も美しい本」と呼びたくなる一冊です。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.003 『共同幻想論』  吉本隆明

: Originally published in 1968

「国家は幻想である。風俗や宗教や法もまた共同の幻想である」

人間のあらゆる営みは共同の幻想で成り立っている。その幻想を「共同幻想」「対幻想」「自己幻想」の三つに分け構造を明らかにする。フロイトの精神分析を軸に、柳田国男の『遠野物語』から「幻想」の位相を取り出す手際がすごい。共同幻想は「禁止」により生み出され、その幻想は共同体の利益のために成立している。しかしどんなに表面的に高度にみえても、「禁止」によって成立する共同性は、未開的な世界であると吉本は言い切る。共同幻想は、現実と妄想の区別がつかない人々へたやすく「禁止」を吸い込ませる。これはまさに現代の社会状況にぴったりと当てはまる。少々難解ではありますが、見えない「社会的抑圧」を無効化する上で欠かすことのできない名著です。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.002 『引き裂かれた自己』  R.D.レイン

: Originally published in 1960

「現実において行動せず、空想においてのみ行動する人は、彼自身非現実的となる」

統合失調症の心理構造を、精神分析の言葉で「文節化」する手法に異を唱え、実存的な立場から現象学的なアプローチで患者の心理に迫る。それは冷たい専門用語による患者の「対象化」ではなく、いわば気持ちの通った視点による‟包含”と言ってよいものです。各部分を記述するのではなく、全体を包み込む。全体的な統一を欠いた統合失調症の人々にとって、そのような心で包み込むような形式自体が、分離した自己を回復させるものとなる。この本の最大の価値はそこにあると思います。大宅壮一の「一億総白痴化」ならぬ「一億総分裂」の危険性をはらむ現代において、本書はその最も有効な処方となる。この手の本にしては翻訳も圧倒的に読みやすい一冊。


 

Yasunori KOGA 古賀ヤスノリ

No.001 『身ぶりと言葉』  アンドレ・ルロワ=グラーン

: Originally published in 1964

「進化はなによりもまず表現手段の進化である」

フランスを代表する文化人類学・先史学者の大書。人間がどのように進化し、道具と言葉、そして身ぶりという表現を使うようになったのか。それらが考古学的な状況証拠から推論されていく。顎を道具のように使っていた動物としての初期段階から、やがて手の使用と同時に、解放された顎は言葉を手にする。身体による身ぶりは言葉を支え、言葉は図示表現(絵)を支えていく。生物進化と表現進化の平衡性。これは3万年続く「絵画と文字の歴史」を推理するスリリングな書物でもあります。表現(芸術)の根本を探求する人にとって、まさに外すことのできない名著です。